シナリオ・プランニング材料「2050年にCO2排出量の80%減を達成するためには何が必要か?」
電気新聞2019年5月8日掲載、ゼミナール180について紹介します。
参考資料
[1] 2050年にCO2排出量の80%減を達成するために何が必要か?(浜潟純大)
背景
2019年パリ協定および国内エネルギー基本法にて、日本では温室効果ガス削減目標として、2030年までに30%、2050年までに80%を設定している。2030年の温室効果ガス30%削減に向けて必要な省エネや電源構成等に関しては既に公表されており、2050年の80%削減に関しては現在解析や検討が進められている。2030年と2050年目標には大きなギャップがあり、2050年目標を実現するために様々な課題がある。この記事は、2050年目標達成必要な課題、特に原子力発電所の新増設要否に関する記事である。
まとめ
イシューマップ
解説
2050年 温室効果ガス排出量80%削減に必要な省エネと温室効果ガス排出量
- 省エネ:2050年度の電力需要110兆 kWh
- 温室効果ガス排出量:1.8億t(非電力)、6500万t(電力)
2050年度の電力需要110兆kWh、温室効果ガス排出量1.8億t(非電力)、6500万t(電力)を実現するために必要な電源構成
- 再生可能エネの電力制御せず、最大規模で導入
- 蓄電池の大量導入
- 電力系統の増強
- 原子力の設備容量2900万kWh、設備利用率86.7% (DF)
原子力の設備容量2900万kWhを実現するために必要な新増設分
原子力の新増設分がない場合における代替案
- CCUSによる3000万tCO2回収・利用・貯蔵
- 水素の輸入、水素製造のためのゼロエミッション電源の上積み
考察
- この記事では、2050年温室効果ガス80%削減に向けて達成すべき温室効果ガス排出量と電源供給量を算出し、その実現には、原子力新増設か代替案としてのCCUS実施が必要としている
- 現状を鑑みると原子力新増設が厳しいが、CCUS実施にはコスト増による日本産業の国際競争力の低下と、水素輸入や製造に対するゼロエミッション電源の上積みの必要性が指摘されている。したがって、前者の原子力の新増設を行う方がコストと実現可能性という観点から良策のように考えられる
- また、この結論を導くまでの前提条件とされている、「省エネが2倍速(年率2.7%)で進む」「再生可能エネの電力制御せず、最大規模で導入」「蓄電池の大量導入」「電力系統の増強」等の項目は、それぞれの実現に向けて技術・社会・制度上の課題がある。それらの項目についても全体像を見据えつつ個別に深堀の議論が必要である